#4 青い鳥をみた少年

あらすじ

モモはどうやら学校に通っていて、明日はテストの様子。めずらしく勉強するモモですが、さっぱりわかんないと諦めて、その日は寝てしまいます。

翌日テストを受けますが、やっぱりさっぱりわからないモモ。0点とってもなるようになるしかないもんね!と開き直り、ぼんやり窓の外を眺めますが、前の席の男の子・ケンくんも同じように何かを眺めていることに気がつきます。後ろから彼をつつくモモ。テスト中に騒いだ二人は立たされてしまいますが、モモはケンくんが何を見ていたか気になって仕方がありません。だけどケンくんはつれない態度。お父さんは外国にいて、お母さんも帰りが遅いケンくんは、毎日ひとりでお留守番。友達を作ろうともせず、すねているのよと、クラスメートからそう聞かされます。モモはケンくんの住むお家まで行きますが、追い返されてしまいます。

その1週間後、ケンくんはモモの住むペットショップへ「ぼくの青い鳥が死にそうなんだ!」と相談に来ます。パパはあいにくオオアリクイの胃酸過多を治すため往診中。そこでモモが代わりに様子を見に行くと、その「青い鳥」というのはインコでした。モモがインコを手当てしたことがきっかけで、ふたりはなかよしに。そしてケンくんの家に入ると、なんとモモの故郷の地図が貼られていて…?

魔法のプリンセス ミンキーモモ 第4話より1シーン
魔法のプリンセス ミンキーモモ
第4話「青い鳥をみた少年」より
©PRODUCTION REED 1982

感想

今回のお話は、「#1 ラブラブ・ミンキーモモ」で引用した首藤さんのコラムに書かれていた通り、2本書かれた第1話のうち、実際の第1話では使われなかった方の内容を少し変更して使われた作品です。

学校でテストを受ける、また放課後にドッジボールで遊ぶモモという、レアな姿が初めて登場しますが、このお話が仮に第1話だったとしても、やはり唐突にモモが登場して始まるという出だしの部分の印象は同じです。一般的には、たとえば「転校生」としてやってくるなど、舞台となる場所に主人公が初めてやって来る際のエピソードが描かれそうなものですが、モモの場合、「それまでもずっとそこにいたかのように」ごく自然に登場します。

ただ、第1話とは異なり、今回のお語では、モモが「どこかの地球」(これ以降、単に「地球」と書きます)にやってきた理由がはっきりと語られ、モモたちの故郷が「夢の国フェナリナーサ」(※)であることが明かされます。

(※) このお話では王様が「フィナリナーサ」と言っていますが、それが元々の名称で、発音しづらいという理由により、後に「フェナリナーサ」に変更されています。このブログでは、言及している回でどう発音されたかの区別なく、作品「魔法のプリンセス ミンキーモモ」に登場する地名としては「フェナリナーサ」と表記いたします。ただし「ミンキーモモ」の元になったといわれる「フィナリナーサから来た男」や、首藤さんのコラムなど各種資料からの原文引用など、区別が必要な場合に限り「フィナリナーサ」と表記します。

ここでちょっとモモの「魔法」について整理してみましょう。
※わたしが執筆時点で観た第31話「よみがえった伝説」までに判明している内容に基づきます。

地球で普通に使える魔法

  • 大人に変身する
    モモの魔法の基本中の基本です。
  • ある職業のプロフェッショナルの能力を身につける
    大人への変身とセットで使われます。
    変身する際は「ピピルマ ピピルマ プリリンパ パパレホ パパレホ ドリミンパ」という呪文を唱えます。(「アダルトタッチで○○になれー」という台詞は、第4話の段階ではありません)
  • その組織(家族・集団など)に最初から属しているように周囲に思わせる
    この魔法でモモはペットショップを営む夫婦の「」になりました。また、この第4話でも、学校のクラスに自然に溶け込んでいます。ただし実際に魔法をかけるようなシーンはありません。
  • 言葉を翻訳する
    ○○語よ、わかれ!」と魔法をかけると、相手の言葉がわかるようになります。主に動物に対して使う魔法ですが、外国へ行ったときに言葉がわからないというような描写は特にないので、おそらくこれに類する魔法を使っているのではないかと考えられます。「ティーチミーホワイ?おしえて?」や「メルシーサンクスありがとう!」のように、モモはよく外国語まじりの言葉を話したりもしますがw
  • グルメポッポ
    運転が魔法によるものなのかはわかりませんが、大人になる前でも、あるいはシンドブックたちでも運転は可能です。グルメポッポの動力そのものはおそらく魔法でしょう。

地球では能力が制限される魔法

  • 他者(動物を含む)を、本人がなりたい姿に変える魔法
    第2話でポインターのメリジェーンに対して使いました。ただし3分間だけ有効です。
  • 勉強の魔法?
    モモは「活字よモモのものになれ!」と魔法をかけようとしますが、あえなく失敗。フェナリナーサではこの魔法で内容を丸暗記できたりするのでしょうか。アンキパンみたいですねw
  • その他の魔法
    特に技名や呪文などを言わずに、なんらかの魔法を使うことがあります。その際モモは、ミンキーステッキを振りながら言葉を発することが多いです。モモは「魔法のプリンセス」と呼ばれるだけあって、本来ありとあらゆる魔法を使いこなせるのですが、夢の世界を信じない人々に対してはほとんど通用しません。フェナリナーサにいるときや、夢や希望、伝説やおとぎ話などを信じる人々が近くにいれば、大きな力を出せることがあります。

一般的に「魔法少女もの」と呼ばれる作品では、主人公は何らかの魔法を自由自在に操れて、わたしたちの住む世界にいる普通の人々を助ける、というようなイメージがあります。実のところ、わたしは「ミンキーモモ」以外の「魔法少女もの」をほとんど観たことがなく、幼い頃に「ひみつのアッコちゃん」や「さるとびエッちゃん」といった作品の再放送を楽しんでいた程度(しかも内容はほとんど覚えていない)なので、あくまでそんなわたしが「イメージだけ」で言っている点はご了承くださいw

この一般的なイメージと比べて、空モモではどうでしょうか。

もともと「夢の国フェナリナーサ」は地球上にありました。ところが、王様たちが1000年の眠りについている間に、夢や希望や幸福を信じなくなった人々が増えて、その結果、フェナリナーサは地球からどんどん離れてしまったのです。そして今は宇宙空間に浮かんでいます。

王家の血をひく者が、誰かに夢と希望を持たせることができたなら、その4回ごとに1個ずつ宝石がはまります。そしてその宝石が12個はまれば、フェナリナーサは元の場所に戻ります

王様が読み上げる「王冠の使用説明書」にはそう書かれています。

つまり地球にやってきたモモに与えられた使命は単なる「困った人を助ける」ことではなく「夢と希望を持たせること」なのです。とてつもなく漠然としています。王様と王妃様がモモに言いつける内容も「地球に行って、良いことをしてきなさい」ですからねw

そして最大のハンデとして王妃様は、「あなたの魔法は、夢の世界を信じない地球の人にはほとんど通じません」とモモに説明します。

つまり実質的には「大人に変身することしかできない魔法少女」がモモなのです。

12歳の女の子が大人になるだけで問題を解決できるのか?
まして「誰かに夢と希望を持たせる」なんてできるのか?

率直に言って「無理ゲー」なのですw

けれどもモモは、「うん、がんばっちゃう!」と元気に言って、地球へ向かいます。たまたま起きていた3匹のおともだけを連れて…

首藤さんはこのように書かれています。

『魔法のプリンセス ミンキーモモ』を多くごらんになった方はお気づきになるだろうが、ミンキーモモが大人になって解決した事件など、ほとんどないのである。
実際はミンキーモモが、大人になってうろうろしているうちに、事件は自然に解決してしまうのである。
僕自身、事件が起こってミンキーモモが大人になって解決するというパターンどおりに、毎回ストーリーを進めるのは嫌だった。
しかし、それを言っちゃあ、おしまいである。
ともかく、ミンキーモモが魔法で大人になって、色々な人を助ける。それが人々の夢をかなえる事になり、地球の人々が失いかけている夢を呼び覚まし、地球から離れていく夢の国フィナリナーサが、再び地球に戻ってくる。……というコンセプトにした。

それでは、ここまでの4話を振り返ってみましょう。

第1~4話でモモが関わった「良いこと」

  • #1 ラブラブ・ミンキーモモ
    • 良いこと→ファイアーショーでガチョンシンボリを優勝させた
    • 職業→女性ジョッキー
    • 要因→ガチョンシンボリの素質、努力
  • #2 メガネでチャームアップ
    • 良いこと→メガネをかけたって美しくなれると認識させた
    • 職業→モデル
    • 要因→モデルになったモモの人気?
  • #3 走れスーパーライダー
    • 良いこと→ジムルに暴走族をやめさせた+事故車から男性を救出した
    • 職業→白バイライダー
    • 要因→ジムルの心変わり+モモとジムルによる救出活動
  • #4 青い鳥をみた少年
    • 良いこと→ケンの救出
    • 職業→消防レスキュー部隊
    • 要因→ケンの夢を信じる気持ちとモモの魔法の相乗

このように、空モモのこれまでのお話を見てきても、少なくとも「魔法でなんでも解決よ♪」という、単純な内容ではないことがわかります。

第1話では、確かにモモがガチョンシンボリを特訓したり、ダイエットさせたり、障壁を乗り越えるために飛び上がったりはしていますが、優勝した走り自体はガチョンシンボリ自身の力です。舌も

モモが変身した職業そのものの力によって、明確に「希望を与えた」といえる(王様も言及している)のは、第2話だけです。まあそれも、もともとはモモのいたずら心から始まって起きた騒動なので、困っている人を助けたというよりは、ペンダントもオマケで光った感じはありますけれどもw

第3話でジムルが暴走族をやめる決心をしたのは、白バイモモとレースを繰り広げる中で起きた、ジムル自身の心境の変化でした。また、事故車から男性を救ったのは確かにジムルですが(モモだけでは助けられなかった可能性の高い描写です)、まあ事故原因もジムルなんですけどねw

第4話については、これから書いていきます。

相変わらず前置きの長いブログですが、こういう全体の節目となる回はどうしても長くなりますね。もはや「感想」の域を超えて「作品解説」みたいになってますが、もう少しお付き合いくださいw

ケンがモモと打ち解けたあと、モモに「パパのコレクション」だと地図を見せますが、なんとこれがフェナリナーサの地図でした。フェナリナーサは「この世にあったっていう夢の国」で、「いつの日か雲のかなた、オーロラのかなたに消えちゃったんだって」とモモに説明します。

このシーンを見て、「天空の城ラピュタ」で、パズーがシータにラピュタについて説明するシーンを思い出しました。「ラピュタ」の公開は空モモ放送の4年後ですけれども、夢や伝説を信じる少年という意味では、ケンとパズーに共通するピュアな心を感じます。

学校で友達を作ろうともしないケンは、唯一おもちゃだけが友達だと言います。ケンが目を閉じると、空想でだけ動き出すおもちゃたち。目を開けると動かなくなってしまう、そんな「現実」にケンはがっかりします。そんなケンに、モモはどこか共感のような気持ちを覚えたのでしょう。

ところが、そのケンの住むマンションが火事になってしまいます。部屋には「友達」であるおもちゃが置かれたまま。ケンは危険を顧みず、炎の中へ飛び込んでしまいます。そこで彼を救出するためにモモは消防レスキュー部隊員になるのですが…

ここからが今回のお話だけでなく、空モモという作品全体の鍵となる部分です。

ケンを救ったのは消防レスキュー部隊員になったモモではなく、なんとおもちゃたちでした。おもちゃたちがケンの周りに集まってくっつき、ケンを炎から守ったのです。

もちろんここは「現実の世界」ですから、通常であればそんなことが起きるはずもありません。実は消火しながらモモは「おねがい!だれでもいいからケンくんを助けてあげて!」と、ミンキーステッキを振りながら念じます。

前述の通り、モモは地球ではほとんど魔法が通じません。ところがケンは夢の国の存在を信じています。モモの魔法と、夢の国を信じるケンの心が溶け合って、モモの魔法は大きな力を持ち、奇跡が起きたのです。逆に考えると、今回のように非常に緊迫した状況では、救出の対象が夢を信じる少年(ケン)でなければ、消防レスキュー部隊員に変身したモモにも救出できなかった可能性が高いです。

ケンを救ったのは、モモの魔法とケン自身の夢を信じる気持ちであり、その象徴こそ、ケンに巻きついたおもちゃたちなのです。おもちゃたちは「きっと今頃フェナリナーサに…」とケンは言いますが、作中ではそのような様子が具体的には描かれていません。火事の中、ケンに巻きついて原形を留めていない姿でのみ描かれているのです。この点は非常にリアルです。

魔法のプリンセス ミンキーモモ 第4話「青い鳥をみた少年」より
魔法のプリンセス ミンキーモモ
第4話「青い鳥をみた少年」より
©PRODUCTION REED 1982

第4話は、モモが地球上で使う魔法が、決して万能ではないことを、はっきりと描き出した作品です。作品が「よくあるタイプの魔法少女ものではない」ことを、この回では強く印象付けられたようにも思います。

今回はわりとシリアスな展開でしたが、空モモ自体は(少なくともわたしが執筆時点までに観た第31話までは)、そこまでシリアスでも小難しい作品でもありません。なんせ放送当時に(コミカライズ版か何かが)連載されていた雑誌は「よいこ」「幼稚園」「学習雑誌」ですから、そこまで哲学的な話が続くわけでもなく、この後しばらくは純粋に楽しいお話が続いていきます。いくら首藤さんでも、さすがに園児に哲学させるようなお話は書きませんw

わたしがこのレビューで書いていることは、あくまで「大人の視点」です。わたしが幼稚園の頃にこれを観ていても「ケンくんが助かってよかったね☆」で終わっていたでしょう。それでいいんですw

だけど、何か心に残る不思議なものを感じた、当時の子どもたちはきっといたでしょう。そして大人になって作品を見返して、子どもの頃にはわからなかった部分に気がつくのです。

わたしはたまたま大人になってから空モモを知りましたが、純粋にさまざまなタイプの作風を楽しみつつも(ときどき暴走してますけど、それはそれで楽しいですw)、何か余韻の残る作品だと感じながら観ています。首藤さんが「子どもだまし」にしたくなかった気持ちは、大人が観ても面白いという事実として、こうしてしっかり伝わっていると思います。

…はい、6000文字を超えましたw
構想ではもっと書きたいことはあったんですが、結構削ってもこうなりましたw

さすがにこのペースで毎回がっつり書いていると、いつ作品の完結までをレビューできるか想像もつきませんw

次回からはもう少し軽めの内容で書きつつ、今回のような節目となるような作品のレビューのみ、力を入れて書いていきたいと思っています。ミンキーモモという作品の魅力が、未見の方にも少しでも伝わればと願っています♪

まあ未見の方にとっては超ネタバレしまくりなので、その点だけはご注意くださいねw

作品情報

基本データ
サブタイトル 青い鳥をみた少年
初回放送日(東京) 1982年4月8日
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スタッフ
脚本 首藤剛志
絵コンテ 湯山邦彦
演出 山田雄三
作画監督 神宮慧
原画 楠田悟
白土理徳
堀隆
武藤照美
高橋千代子
声の出演
ミンキーモモ 小山茉美
王様 増岡弘
王妃様(※) 塚田恵美子
パパ 納谷六朗
ママ 土井美加
シンドブック 田ノ中勇
モチャー 木藤玲子
ピピル 三田ゆう子
ケン 小宮和枝
警官 福士秀樹
教師 岡崎裕美
安田隆

(※)クレジット上の表記は「王女様」になっています。

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