「風のマジカル」と「魔界大冒険」

Wikipediaでちょっとした調べ物をしていると、気が付けば最初に調べていたことと全く無関係な記事へたどり着き、それが興味深い内容だと、延々とリンクをたどってしまうことってありますよねw

まあ、昔はそれで気が付けば朝だったなんてことも何度か←

そんなわけで、最初に何を調べていたか忘れたのですが、この前の日曜に「風のマジカル」の記事にたどり着きまして、それを見ていてびっくりしたのです。

何にびっくりしたかを書く前に、まずこの小泉今日子さんの楽曲「風のマジカル」について。

「風のマジカル」とは

「風のマジカル」とは、当時人気を博していたアイドル「キョンキョン」こと小泉今日子さんの9枚目のシングル「渚のはいから人魚/風のマジカル」に収録された曲です。

渚のはいから人魚」の方は、当時のオリコン週間1位を獲得し、紅白歌合戦でも歌われるなど、わりと知名度は高いと思います。わたしはまだ生まれてないか、とっても幼い頃の話なので、この辺はよく知りませんけれどもw

そして、そのカップリング曲である「風のマジカル」なんですが、これは1984年公開の映画「ドラえもん のび太の魔界大冒険」の主題歌として作られました。作詞はディズニーの訳詞などでもおなじみのヒットメーカー・湯川れい子さん、作曲はNOBODYというロックバンドが担当されました。

「魔界大冒険」の主題歌は「だからみんなで」?

さて、映画「ドラえもん」を好きで、DVDなどで「魔界大冒険」を観たことのある方は、あれ?と思うかもしれません。

キョンキョンがドラえもんの主題歌なんて歌ってたっけ?と…

DVDや以前発売されていたビデオでは、「魔界大冒険」の主題歌は「だからみんなで」という曲になっています。

映画「ドラえもん」シリーズではおなじみ、武田鉄矢さんの作詞、劇伴も担当されている菊池俊輔さんの作曲、岩渕まことさんの朗々とした歌声。じつに「映画ドラえもん」らしい曲なんですが、これは実は2年前の映画「のび太の大魔境」のために作られた曲でした。それが使いまわし再利用されているというわけです。

つまり「風のマジカル」が流れる、オリジナル版の「魔界大冒険」を観ることができたのは、1984年の劇場公開時、同年秋のテレビ放送時、あとは各地でフィルム上映会などが行われた際などに限られ、数十年にわたって「風のマジカル」を含むオリジナル版は封印された状態となっていました。曲そのものが封印されたというわけではなく、「ドラえもんとの関わり」という形で、小泉さんが歌う「風のマジカル」という曲が使われることは一切なかったのです。

「風のマジカル」の封印状態

1999年に「DORA THE BEST」という、映画「ドラえもん」の発売当時までの主題歌がすべて収められたCDが発売されたとき、「風のマジカル」のみ、なぜか「インストゥルメンタル」での収録となっていたことからも、よほど「何かある」というのはわかります。ほかの曲はレコード会社が違う曲も含めて、すべてオリジナル歌手による楽曲が収録された限定盤だったのに、この曲だけが、かたくななまでに歌入りが収録されなかったんですから…

いったい何があったのかは今も全くわかりません。あちこち調べても「権利関係」というキーワードは出てくるのですが、どういう権利関係だったのか。仮に映画上映とテレビ放送のみ、という契約だったとしても、ビデオ/DVD化に際して再契約を結ぶのがそう難しいとも思えませんし、CDへの楽曲の収録にいたっては、手続きとしてはさらに簡単だと思われるのですが、「どうしても首を縦に振らなかった権利者がいる」としか思えません。

ただ、その状況ものちに多少は緩和されたらしく、2010年に発売された「ドラえもん 映画主題歌大全集」というCDには、きちんと小泉さんが歌う「風のマジカル」が初収録されたようです。YouTubeなどで聴いたことがある人も多いかもしれませんが、ネットに疎いドラえもんファンなら、このCDで初めて「風のマジカル」を聴いた方もいるでしょう。なんせ20年以上にわたって、ドラえもんとの関わりとしては封印されていた曲なんですから…

わたし自身はそれよりもはるか前に、小泉さんのCDをレンタルして(どのCDだった忘れましたがw)、「風のマジカル」をiTunesに取り込みました。だから「風のマジカル」という曲はちゃんと知っていました。映画公開当時の記憶はないので、「へえーこんな曲だったのね」程度の感想でしたがw

ところがその後も、DVDの曲が元に戻されることもなく、映画のエンディングテーマとしての「風のマジカル」は幻のままでした。

映画の劇中に「風のマジカル」をアレンジしたBGMが流れる箇所もあるのですが、それすらDVDでは差し替えられているという徹底ぶり。そのわりに映画と関係のない「さらばキー坊」という「ドラえもん」の1エピソードでは、その映像ソフト版でも、堂々と歌入りの「風のマジカル」が流れていたり、アレンジBGMは複数の作品で使われていて、そこもそのままだったりするので、徹底してるのかザツなのかわからない状況ではありましたがw

ついに封印が解かれた!?

ということで冒頭に戻ります。

Wikipadiaの記事でわたしがびっくりしたのは、この記述でした。

AmazonビデオやAbemaTVをはじめとしたインターネット配信[6]、および2018年のWOWOWでの放送に際しては、音楽の差し替えは行われておらず、「風のマジカル」を聴くことができる(劇中の同曲をアレンジしたBGMを含む)。

な、な、な、なんですと~!!!!???

何十年も封印されていて、それを観るには有志の上映会にでも行くしかなかった幻のオリジナル版が、しれっとネット配信されているというのです。しかも既に3年ほど前から。わたしはその頃ずっとゲームに明け暮れていたので、その情報は完全にノーチェックでした。

これは観るしかない!と、まだAmazonプライムの会員期限が残っていたので、Amazonに直行しましたが、なんと現在は配信されていないようでした…

いざって時に役に立たないAmazonプライム。最近はAmazonで買うことも減ったし、値上げもしたことだし、6月の期間満了をもって解約を決定した瞬間でした←

そしてAbemaTVに。「魔界大冒険」の放送予定はあったのですが、ちょうど家にいない時間帯だったので、Abemaビデオを観るため、Abemaプレミアム1ヶ月無料体験ぽちっと登録!w

無事に「風のマジカル」版の「魔界大冒険」を観ることができたのでした。

「魔界大冒険」エンドロールより
「魔界大冒険」エンドロールより

オリジナル版を観たいファン心理

さて、この「風のマジカル」という曲ですが、わたしにとって、この曲がなくてはならない、そんなにものすごく好きな曲だったの?と訊かれれば、全然そんなことはありませんw

ポップな曲調などは決して嫌いではありませんが、まあ当時よくあったであろうタイプのアイドル曲のひとつというような印象ですね。

先ほど、「魔界大冒険」の主題歌は、映像ソフト版では「だからみんなで」という曲に差し替えられていたことを書きましたが、第5作であるこの「魔界大冒険」を除き、映画「ドラえもん」第1作「のび太の恐竜」から第17作「のび太の銀河超特急」に至るまで、主題歌を作詞されたのは武田鉄矢さん藤子・F・不二雄先生は、関係者から武田さんを降板させようと提案されたときには激怒したとか、武田さんご本人が降板を打診したときにも強く慰留されたという話が残っているほど、武田さんの歌詞を非常に気に入っておられたようです。わたしも映画「ドラえもん」に武田さんの歌詞はなくてはならないものだと感じていました。

それなのに5作目である「魔界大冒険」で、唐突に武田さんが降板し、アイドル曲になってしまったのは、どういう事情があったのでしょう。実は前作「のび太の海底鬼岩城」の観客動員が少し落ち込んだようなのです(Wikipediaの記述によれば、配給収入10億円、その前作「大魔境」は12億円)。「海底鬼岩城」から監督を務めた芝山努さんは、次(魔界大冒険)もコケたら監督を降りてもらうよ、とまで言われていたそうで、小泉さんの起用はテコ入れの面もあったのかもしれません。

小泉さんの効果があったのかどうかはわかりませんが、「魔界大冒険」は配給収入17億円と大躍進します。次作「のび太の宇宙小戦争」ではアイドル路線を続けず、武田鉄矢さんが作詞とともに歌唱も担当された、名曲であるとファンの間でも名高い主題歌「少年期」が起用されましたが、もしかするとこれも藤子先生の意向があったのかもしれませんね。

そこまで曲に思い入れがあったわけでもないのに、なぜオリジナル版の「魔界大冒険」を観たかったかですが、それはもう「オリジナル版だから」の一言ですw

だって、「風のマジカル」がエンディング曲であることを前提として、芝山監督はじめスタッフの方々は各シーンを作っているのです。この曲をアレンジしたBGMを(おそらく菊池俊輔さんが)アレンジして作成したのも、この曲がエンディングで流れるからこそで、それをほかの曲に差し替えてしまうというのは、元の演出意図を改変してしまうことに他ならないのです。

上でツイートしている、窓の外を魔法のじゅうたんが飛んでいるシーン。DVDやビデオでは、ここで「ポケットの中に」(大山のぶ代さんが歌う「のび太の恐竜」主題歌)のメロディが流れます。「ポケットの中に」自体は大好きな曲です。だけど、このシーンは「ポケットの中に」を流すことを意図して演出されてはいません。後付けで差し替えられているので、なんだか居心地が悪いのです。

ここで「風のマジカル」のアレンジBGMがかかったとき、このシーンが初めて「しっくり来た」という印象を受けました。映画公開当時、わたしが実際に劇場で観ていたか、まだ生まれていなかったかは定かではありませんがツッコミ禁止w)、少なくともわたしの記憶には「風のマジカル」が流れるこのシーンはありません。むしろ「ポケットの中に」が流れる状態で繰り返し何度も観ています。にもかかわらず「しっくり来た」のです。

エンドロールの演出も同じです。「風のマジカル」のために作られたエンディングに、映像ソフト版では無理やり「だからみんなで」が乗せられていますから、やっぱり違和感があったのです。それをオリジナル「風のマジカル」の状態で観ることができたとき、やっと1984年の春休みを追体験したような、そんな気持ちになれました。

映像や音声を、劇場公開時から差し替えられるというのは、もちろんそれにはやむを得ない「大人の事情」があるのはわかります。しかしながら、やっぱり作品のファンとしては、公開当時の演出そのままで作品を観たいのです。「魔界大冒険」は30年以上の時を経て、ようやくその封印が解かれました。同じように曲などが監督の意思と関係なく差し替えられた作品は、まだまだたくさんあるでしょう。監督自身の意向で変更したなら、まだ理解できなくもないのですが、第三者が改変するようなケースは少しでも減ればいいなと思っています。(最近の作品は映像ソフト化を前提に作られているので、「魔界大冒険」に類するケースは少ない気はしますが)

「魔界大冒険」はやっぱり名作!

そんなわけで、「風のマジカル」が流れることを確認したくて観た「魔界大冒険」でしたが、これやっぱり最高ですね!!部分だけを観るつもりが、夢中になって全部観てしまいました。大山さんたち声優さんの声も生き生きしてるし、なによりゲスト声優がミンキーモモ(小山茉美さん)ですし!w

映画「ドラえもん」シリーズは、藤子先生のご病気のため原作が描かれなかった第9作「のび太のパラレル西遊記」の前後で、わりと作風がはっきり分かれます。

若い方と話すと、わりと後半(「のび太の日本誕生」以降、藤子先生が最後に原作を描かれた「のび太のねじ巻き都市冒険記」まで)の作品が印象に残っているという方が多く、確かに後半にも名作が多いことはわかりますが、前半の8作品は、映画を好きで好きでたまらなかった藤子先生ご自身が、ご自分の映画を作れるということで、ノリにノッて原作を描かれたことがよく伝わってきます。中でもこの「魔界大冒険」は、ハラハラドキドキ感がたまりません!w

Abemaビデオは無料体験中ですが、この機会に過去の映画「ドラえもん」を観たいなと思っています。

2005年に行われた声優さんの交代以降、じつは大山さん時代の「ドラえもん」は、できるだけ観ないようにしていました。藤子先生のファンとして、「ドラえもん」を次世代に受け継いでほしいと願っていたので、「わさドラ」に慣れるためにも、大山さん時代の作品は、ちょっと自分の中で封印気味だったのです。

あ、誤解して頂きたくないので、少しだけ補足しておきますが、「ドラえもんは声が変わってからちょっとね~」なんて声は、今でもものすごくよく聞きますけど、わたしは現在の声優さんたちに悪い感情は一切持っていません。むしろ声優交代から今年で15年目に入りましたが、あの巨大なプレッシャーの中でスタートしてから14年以上もの間、「ドラえもん」のキャラクターたちを大切に演じ続けてくれたことを、心から感謝しています。わたしは「声が変わってちょっと…」なんて言うほど、生半可な藤子ファンではありませんので、大山ドラとわさドラは別作品として、そしてどちらも肯定的にとらえています。まあこのあたりは長くなりそうなので、いずれ改めて書きますw

お話を戻しますが、そういう自主的な封印もあったので、リメイクではない方の「魔界大冒険」を観たのは10年以上ぶりでした。ところが驚くべきことに、台詞を含め、各シーンの演出、作画など、わりと細部にいたるまで、結構はっきり覚えていたのです。子どもの頃どれだけ映画のビデオを観まくっていたかという証左でもありますw

先ほど「わさドラ」に悪い感情を持っていないとは書きましたが、それは声優さんたちにであって、個々の映画の演出などをとってみると、ちょっとあまり合わないと感じるときもあります。それは大山ドラの末期にも言えることだったんですが、「泣かせる演出がくどいこと」です。

ほら、感動でしょ?ドラえもんたち大号泣だよ!君も泣いて!ほら泣け!

泣けるかっつーの!w

ドラえもんに限らず、藤子先生の漫画作品を読めばわかりますが、ものすごく泣けるシーンはたくさんあります。だけど、その感情の露出はむしろ控えめなんです。

いわゆる「泣ける」作品でよく挙げられる「さようならドラえもん」の原作を読んでみましょう。ケンカでぼろぼろになったのび太くんに肩を貸して一緒に帰るドラえもん。そして眠るのび太くんの寝顔を見つめるドラえもん。

思い出すだけでウルッときてしまいますが、ドラえもんは、この2コマしか泣いていないのです。

それもアニメの演出でよくあるように、鼻水をたらしてぼろぼろ涙を流して泣いたりはしていません。やさしい目からふたすじの涙が頬を伝っている、これだけなんです。あ、思い出すだけで…(´;ω;`)

「魔界大冒険」を観ていて、この時代の「ドラえもん」は、原作者の意図をよくわかって演出していると、改めて思いました。さすがは芝山監督。「泣かせよう泣かせよう」というくどい意図が透けて見える演出があると鼻につくのですが、「魔界大冒険」は、美夜子さんとの別れシーンなど、しんみりするシーンでも、気持ちの悪い大号泣はしていないのです。そこはしっかり原作の表現を踏襲していて、とてもよかったです。

ビジュアル的に、ぼろぼろ大号泣した方が、子どもにわかりやすいと思って演出しているのかもしれませんが、それは子どもだからとバカにしすぎです。

演出をされる方には、ぜひとも藤子先生の作品、「ドラえもん」以外にも「エスパー魔美」やSF短編など、じっくり読んでみてほしいです。演出として大仰なくらい号泣している表現も皆無ではありませんが、それほど多くもなく、全体的に見れば「泣き」の表現はとても抑制的です。だけどしんみりします。じわっと泣けます。わたしはそこが好きなんです。

まあ…2007年に「魔界大冒険」のリメイクがありましたよねw

それを思い出して、なんで印象がオリジナル版とここまで違うんだろうと考えると、やっぱり原作の持ち味の生かし方が違っていたのかなと感じたわけです。絵柄はやわらかいタッチでわりと好きでしたけどね。声優さんがこれでもかというくらい芸能人起用だったのもさることながら、演出などの面でもやや残念な気持ちは残ったリメイクでした。人気作のリメイクだけに大変だったとは思うんですけれども…

オリジナル版の「魔界大冒険」は本当に面白かったです。映画「ドラえもん」のおすすめはどれ?と訊かれれば、間違いなくこれを筆頭に挙げます。ぜひいろんな世代の方に観ていただきたいですね。

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