「チンプイ」アニメ化までの思い出

わたしの人生に大きな影響を与えたといってもいいくらい、大好きなアニメが「チンプイ」です。

わたしが「海モモ」を観たのも、この「チンプイ」で主人公・エリちゃん役を演じた、当時大人気の若手声優だった林原めぐみさんが、モモ役を演じることになったから、ということもあります。

チンプイ DVD-BOX
チンプイ DVD-BOX

原作者は藤子・F・不二雄先生

今では圧倒的に知名度の高い「ドラえもん」の作者として知られていますが、その昔は「藤子不二雄」という、安孫子素雄さん(藤子不二雄A先生)と藤本弘さんの共同ペンネームで活躍されていました。「F」は「藤本」からきているので、「チンプイ」の作者は藤本さん(1996年逝去)の方になります。

この作品は、ちょっと特殊な成り立ちでもあり、テレビアニメ化までされた藤子作品でありながら、原作が10年以上にわたって入手困難な状況が続いていました。小学館が、2011年に「藤子・F・不二雄大全集」のラインナップとして、その後2017年には「てんとう虫コミックス」のレーベルで刊行したため、今では手に入りやすくなりました。電子書籍でも発売されています。


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「チンプイ」が連載されたのは「藤子不二雄ランド」

特殊な成り立ちというのは、この作品はもともと、当時の藤子・F先生(以下「F先生」と書きます)が主に活躍の場としていた、小学館の雑誌に描かれた作品ではなかったのです。

昭和末期の頃、今から見れば信じられない規模の藤子ブームが起きていました。もちろん起爆剤となったのは、1979年に放送を開始したテレビアニメ「ドラえもん」。その劇場版が毎年作られ、観客動員数が200~300万人規模だった頃です。テレビアニメの視聴率も絶好調。「怪物くん」「パーマン」「忍者ハットリくん」「オバケのQ太郎」といった、往年の藤子作品(当時はAやFの区別なく「藤子不二雄」名義でした)も、次から次へとアニメ化され、藤子アニメを放送しない日はないくらいの盛り上がりを見せていました。

その人気がピークだった1984年、中央公論社という、当時の子どもたちには全く聞きなれない出版社が、藤子不二雄漫画全集を、なんと週刊で発行し始めたのです。

それが「藤子不二雄ランド」、通称「FFランド」でした。

FFランドは、一応は漫画全集という触れ込みでしたが、10歳前後の子どもを読者として想定していて、大人向けの作品はほとんど省かれていましたし、「雑誌に近い単行本」のような体裁でした。

巻頭にはセル画がつき、巻末には藤子先生お二人による新作漫画の連載という、ファンの子どもたちにとってはたまらない企画。その中のひとつとして描かれた新作が「チンプイ」だったのです。

このあたりの知識は後付けで得たもの。わたしがまだ幼い頃の話ですから、当時のことはあまり記憶にありません。ただ、FFランド版の「ドラえもん」が、巻数は飛び飛びではありましたが、なぜか家にありました。物心がついたころから「ドラえもん」のアニメを大好きだったので、ママンにせがんで買ってもらったのかもしれませんw

その「ドラえもん」の、たしか13巻あたりでしたか。「チンプイ」の第1回が載っていました。それがわたしと「チンプイ」の最初の出会いでした。

「チンプイ」ってどんな作品?

「チンプイ」は、アニメ化された当時よく「女の子版ドラえもん」のような紹介をされていましたが、実際にはそんな単純なものではなく、確かに「ドラえもん」の「ひみつ道具」に相当する便利な「科法」というものは登場しますが、基本的には「現代版シンデレラ」とでもいうべき内容です。

はるか宇宙の彼方にあるマール星、そのレピトルボルグ王家の第一王子ルルロフ殿下が、地球に住む女の子・エリちゃんを見初めて求婚する物語です。チンプイはエリちゃんを説得するためにマール星からやってきた、地球でいうネズミのような宇宙生物です。

エリちゃんはミンキーモモと同じく12歳。連載が始まった頃のわたしにとっては「エスパー魔美」の魔美ちゃんと同じくお姉さん的なイメージでした。とはいえ地球の常識では結婚するような年齢ではありません。マール星と地球の習慣の違いや、そのギャップから起きる騒動などが面白い、基本的にはSFギャグというような分類になる作品です。

なかなか手に入らなかった単行本

FFランドは毎週続けて買っていたわけじゃなかったようです。なので読んだことのない「チンプイ」が結構あるはずで、幼いながらもそれなりに物事がわかるようになった頃、単行本を探しに近所の本屋さんへ、おこづかいを握りしめて買いに行くのですが、全く売っていません。

まだ電子書籍どころかアマゾンどころかスマホどころか携帯電話どころかインターネットどころかパソコンすら各家庭にない時代です。こうやって列記すると、平成の30年間での情報分野の進化は異常なスピードだと実感しますw

そんなあるとき、パパンが自動車に乗せて大きな本屋さんに連れて行ってくれました。そうしてようやく手に入れた1巻と2巻。もう穴があきそうなほどに何度も何度も読みました。

当時はまだ子どもですから、大好きな漫画を読んでいると、それがアニメ化されることを心待ちにし始めます。単行本を手に入れたのは1987年ごろでしたか。その年の秋に「藤子不二雄」がコンビを解消することが、大きく新聞などで報道されます。

「藤子不二雄」のコンビ解消とブーム終息

わたしを含めて当時の熱心な読者は、幼いながらも「ハットリくん」と「ドラえもん」では絵が違うことに漠然と気がついていました。子ども向けの、たとえば雑誌「小学○年生」の企画などでは、合作してるんだよーという風に書かれていましたが、合作していた時代もあるのは間違いないものの、その当時からさらに何十年も昔の話で、わたしが読んでいた頃には、じつはそれぞれ別の作品を描いていたというわけです。F先生が「ドラえもん」を、A先生が「プロゴルファー猿」を描いている写真も見たことがあり、どちらがどの作品を描いているかは、だいたい把握してました。

だからコンビ解消のニュースを見たとき、びっくりはしたものの、どこか「やっぱり」という気持ちもありました。そしてコンビ解消の頃から、徐々に空前の藤子ブームも(ドラえもん人気のみ維持したまま)終息に向かいます。

ちなみにわたしが生まれて初めて意識した漫画家が「藤子不二雄先生」であり、様々な作品とともに成長してきました。ファンだという気持ちは大人になっても変わることはありませんでした。時期によって、どっぷり浸かってるか、たまに読む程度かという違いこそあれ、藤子作品がわたしの人格を形成するほど、大きな影響を受けていることは事実です。

A先生は、藤子ブームの頃から作られてきた一連の子ども向けアニメが、1989年頃までに立て続けて放送を終了してしまいます。しかしその後、「笑ゥせぇるすまん」という作品が大ヒットし、世間は大人向けのブラックユーモアテイストな藤子作品の存在を認識することになります。

一方F先生は、ドラえもん人気は継続していたものの、ちょうどコンビ解消の1年くらい前から、体調を大きく崩されてしまいます。当然「チンプイ」も休載。1988年の映画「ドラえもん」も、原作が描かれない事態となってしまうのですが、その年の秋から「のび太の日本誕生」の連載で復帰。「チンプイ」の連載も(ペースは落としつつも)再開されます。

そして1989年の夏、「エスパー魔美」の後番組として、「チンプイ」のアニメ化が決定するのです。文字通り何年もアニメ化を待っていたのですから、小躍りするほど喜んだのは言うまでもありませんw

その後

「チンプイ」のアニメ作品については、今後このブログでもレビューを書きたいと思っていますし、折に触れてコラムでも書いていくことになると思いますので、ここでは作品の内容そのものに関することは省略します。

1989年11月から始まったアニメは、1991年4月に放送を終了します。作品の性質からしても「ドラえもん」のように何十年も続けられる内容ではなく、単行本で4巻しかない原作も、そのほとんどをアニメ化し終わっていました。それでも終了が決まったときは、胸にぽっかり穴があくような淋しさを感じたものです。

続いて、1984年から刊行されていたFFランドも、同じ年の5月には全301巻が堂々完結。「チンプイ」は、単行本の5巻にするにはあと2話分足りず、それは数ヶ月以内に描きおろされて、第5巻が刊行される…はずでした。

ところが、F先生の体調がおもわしくないなどの事情もあり、その後の仕事をほとんど映画原作の「大長編ドラえもん」に絞らざるを得ない状況となってしまいます。「チンプイ」は、求婚相手であるルルロフ殿下の姿が描かれていない、エリちゃんは求婚を受けてマール星へ行くのか行かないのか、など数多くの謎を残したままで、F先生の手でその完結編が描かれることをファンからは強く待ち望まれていたのですが、1996年9月、F先生のご逝去により未完のまま終わってしまうのです。

FFランドは、301巻で「第1期完結」という表現がされていて、いずれ「第2期」を出す計画があるような雰囲気もあったのですが、中央公論社の経営不振もあり、そのまま計画はお蔵入りに。非常に残念な話ではありますが、このFFランドの刊行自体も、不振の原因のひとつだったようです。その後は読売グループに入り「中央公論新社」として再出発しますが、「チンプイ」などのF作品を再版する予定もなく、SF短編の文庫など一部を除いてF作品にはノータッチとなってしまいます。(新社になってからは、以前のような漫画作品の出版自体が激減してしまいました)

「チンプイ」の単行本は、1997年に未収録分を含めて4巻に再構成され「完全版」として刊行されましたが、その発行部数も決して多くはなかったようで、数年後には品切・重版未定の状態に。それから2011年の「大全集」まで「チンプイ」の原作は幻の作品になってしまっていました。

そんなわけで、ちょっと陽の目を見ることの少ない作品ではあったのですが、てんとう虫コミックスに入ったことで、読むことが容易になったのは本当に良かったと思っています。このブログではアニメ版の方を中心に取り上げていきますが、原作も、とくに「ドラえもん」を楽しく読んでいる子どもたちの目にとまって、こちらも楽しんでもらえるといいなぁと願っています。

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