作画監督のお話

この「アニメコラム」というカテゴリーでは、単一の作品に限らないアニメ全般のことや、単一の作品であっても各話ではなく作品全体に関わること、その他だらだら書きたいことなんかを気が向いた時に書いていきますw

今回は「作画監督」についてのお話です。

アニメの作画工程

その話に入る前に、ちょっとアニメの作画工程について、ざっくりと説明しておきたいと思います。

といっても、わたしは元アニメーターでも何でもない、ただの素人です。わたしが子どもの頃から本などを読み漁って得た「アニメの作り方」に関する知識を元にしているのと、現在のアニメ制作はデジタルが当たり前になっていますが、わたしの知識はセル画時代のものですので、現場を知っている方から見れば誤っている点や、内容的に若干古い(今では行われていない、または別の手法が用いられている)部分も混じってるかもしれませんが、その点はどうぞご了承ください。

アニメの原理がパラパラ漫画だというのはよく言われる話です。ちょっとずつずらした静止画を何枚も描き、それを重ねてパラパラとめくると、動いているように見えるのです。アニメを作るためには何枚もの「動画」が必要で、それを1人で描くわけには行きませんから、複数のアニメーターが描くことになります。

具体的に何枚くらいの「動画」が描かれるかですが、動画枚数というのは、そのままアニメーターに支払われる「出来高払い」の給料等や、動画をトレースして彩色されるセル画(繰り返しますが、デジタル移行前の話です)の枚数および彩色スタッフに支払われる給料等にもつながりますから、予算が多ければ多め(動きがなめらか)、予算が少なければ少なめ(動きが粗い)ということになります。おおむね30分アニメ(実質22~25分)の場合で3,000~4,000枚だそうです。(クオリティ重視の現場では、それよりかなり多い場合もありますし、逆であれば少ないこともあります)

そして、この「動画」は、たとえば学校を出て新人アニメータとして制作会社に入った場合に、最初に任される仕事です。つまり、最低限の動画技術を習得していれば、そこまでスキルが高いアニメーターでなくても務まります。

実際のアニメ作品で、作画クオリティを左右するのは、動画で描かれる動きの元となる絵で、それが「原画」です。絵コンテやレイアウトを元に描かれる絵で、これは30分アニメの場合で300カット程度だそうです。一般的に「天才アニメーター」などと呼ばれる人は、この原画のクオリティが天才的に高い人のことを指します。あの宮崎駿さんなどは天才アニメーターから監督になった方です。

動画担当のアニメーターは、原画の絵をトレースし、クリーンナップしつつ、原画と原画の中間の絵(中割り)を描きます。最終的には「動画チェック」などの役割の人が動画を細かくチェックしてから、彩色などの仕上工程に入ります。

さて、「原画」に話を戻します。

30分アニメ1本を作る際に原画が300カット必要だとして、それを1人ですべて描くことは、通常はありません(作品によっては1人原画というケースもありますが、今回は割愛します)。現在では原画スタッフ10~20名程度が標準のようですが、昔は3~10名程度が一般的でした。

原画を描くアニメーターというのは、動画からスタートして、その才能が認められて(原画昇格試験をパスするなどして)その地位に就いています。つまり「動きの元となる絵をゼロから描ける人」なのですが、当然ことながら、その原画スタッフそれぞれに絵の個性があります。

アニメーター(原画)は、キャラクターデザインに基づいて、他人がデザインしたキャラクターが動く絵を描くわけです。自分がデザインしたキャラクターならともかく、目の大きさ、輪郭、口の形などの細かい部分を含め、いくら似せて描こうとしても、やはり自分の個性が出てしまうことがあります。リアルなタッチが得意なアニメーターがシンプルなキャラクターを描くなど、得手不得手も影響します。また、原画担当はベテランアニメーターとはいえ、やや動きのおかしい部分が出てきたりすることもあります。

アニメーターそれぞれの個性が画面に出てしまえば、シーンによって絵が違う、ということになってしまいます。

ここで古い話を実例として出しますが、大昔「鉄腕アトム」というアニメがありました。手塚治虫さん原作の超有名作品です。初の国産テレビアニメでもあります。この作品は手塚さん率いる虫プロが制作していましたが、スタッフに夏休みを取らせるため、ある出来たばかりの外注スタジオに原画を委託しました。

それがスタジオゼロです。アニメーターの経験があるのは社長の鈴木伸一さんだけ。ほかの原画メンバーは、藤子不二雄さん(藤本弘さん、安孫子素雄さん)、つのだじろうさん石森章太郎さん…(各ペンネームは当時のもの)

揃いも揃って個性的な漫画家ばかりだったのですw

完成した作品は、随所に藤子アトム、つのだアトム、石森アトムが登場する、作画的に統一感の取れていないアニメとなっていて、手塚さんは試写を見てシブい顔だったとか…w

これは国産初のテレビアニメでの実話で、その作品のサブタイトルは「ミドロが沼の巻」です。有名な話なので、テレビなどで一部放送されたこともありますから、知ってる方もいるでしょう。

さて、のちの作品ではこういうことが起きないよう、複数の原画スタッフが描いた絵を、統一的なタッチに修正したり、動きが作品に合わない部分があれば、それを合うように修正する役割が生まれました。それが今回の本題「作画監督」(作監)です。

……前置きだけで2000文字を超えてしまったんですがwww

作画監督の個性

作画監督は、原画を描けるアニメーターの中から選ばれます。作画監督が自身で原画を描くこともありますが、チェックや修正作業(いわゆる作監修正)に専念するケースもあります。

キャラクターデザイナー=作画監督の場合は、その作画監督自身がデザインしたキャラクターに近づけるわけですから、何も問題はありません。だけど30分アニメの作画監督を、毎週1人が担当するというのは、およそ現実的ではありません。(ただし、かつては「アルプスの少女ハイジ」や「赤毛のアン」のように、1年間にわたって1人が作画監督を担当した作品も存在します)

そこで「各話作監」と呼ばれる、その週によって、別の人が作画監督を担当する形がとられることが一般的です。

作画監督は、統一的なタッチに修正する役割、と書きましたが、それはつまり「作画監督自身の個性に修正すること」でもあります。

ということは、画面に作画監督の個性がはっきり出ることが少なからずあるわけです。

わたしが、アニメの「作画監督」という役割を初めて認識したのは、藤子・F・不二雄さん原作のアニメ「チンプイ」が最初でした。

放送当時のわたしは、乳幼児か小学生か中学生のどれかです(ボカしますw)

これは大好きなアニメで、毎週テレビに釘付けになって観ていたのですが、あるとき気がついてしまったのです。

先週と顔が違う……

ビデオに録画して何度も観ていたので、主人公エリちゃんの顔が妙に変だったり、きちんと整っていたりすることを発見しました。そして「この作画監督のときはこの絵!」というのが、次第にわかるようになってきたのです。

今でもエリちゃんの顔を1~2カットも見れば、この回の作画監督は誰かをピタリと当てるという、就職の役に立たない特殊技能が身についていますw

いま観ている「空モモ」でも、まだ作画監督を言い当てるほどの知識はありませんが、回によってモモの顔が違うことくらいはよくわかります。これについては首藤さんがコラムで触れています。

ミンキーモモがどこにいこうが、何をしようが、どんな顔になろうが……実際、作画監督と原画が各回で変わるごとにモモの顔が変わり、これにはいささかとまどった……ファンの間でも誰それの作画監督や原画がいいの悪いのと意見が飛び交い、脚本家からも、自分の脚本は誰それの作画監督、原画の時にしてくれと、注文が出るぐらいだったが、いっさい僕は無視した。
芦田豊雄氏が作ったミンキーモモの個性的なシルエットに変わりがない以上、どんな顔をしていてもミンキーモモはミンキーモモなのである……という気持ちを崩さなかった。
もっとも、これはシリーズ構成としての僕の気持ちで、総監督の湯山邦彦氏がそこいらをずいぶん考え、苦労しただろう事は想像できる。

「空モモ」放送当時も「チンプイ」におけるわたしのように作画にこだわるファンがいたんだなぁというのは、それは作品を深く愛するファンがいる以上、ある意味当然なのかもしれませんが、脚本家さんたちもモモの顔が気になってたのね、とw

正直いうと、わたしも「チンプイ」で大好きな原作がアニメ化されたとき、「えー?この回の作監この人なのー?」なんて失礼なことを口走ったりしてましたが、放送から数十年を経た今となっては、当時は苦手だった作画監督の回を観ても、むしろ微笑ましく思えたりするから不思議ですw

おわりに

今の世の中、アニメを好きな人は、子どもから大人まで大勢います。だけど、作画監督にこだわって作品を観る人となると、かなりマニアックな域に入ります。そしてわたしはその域にいましたw

過去形なのは、大人になってアニメを観ていなかった時期が長いからです。

最近「空モモ」をきっかけとして、古いアニメ作品を観るようになったことで、自分の中に眠っていたマニア心が呼び覚まされた気がしています。

このブログでは、わたしの持っている知識なども動員しつつ、脚本、演出、作画、声優など、いろんな面にスポットを当てた記事を書いていければと思っています。

各作品のレビューの合間に、こうしたコラムも書いていきます。

どうぞお付き合いくださいませ♪

コメントをどうぞ♪

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください